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【書評】深夜特急2 マレー半島・シンガポール | 沢木耕太郎

time 2017/07/08

【書評】深夜特急2 マレー半島・シンガポール | 沢木耕太郎

先日初めて読んだバックパッカーのバイブルとも言える「深夜特急」の第1巻に続いて今回は第2巻を読み終えた。
奇しくも、自分はこの本を読み始める直前にマレーシア行きを決めていた。
そして、マレーシアよりもシンガポール行きの安いチケットを発見し、シンガポールとマレーシアの両方を訪ねることにしていた。

そんな中、この第2巻は自分とは逆ルートではあるが、タイからマレー半島を南下し、シンガポールへ行く。

前作の第1巻を読み終えて香港行きを決意した自分だが、結局、事前に危惧していたとおり、著者のような刺激的な体験はできなかった。
それは、香港が当時とだいぶ変わってしまっていることも大きいと思うし、自分自身の旅の経験値が、当時の著者よりも高かったせいで感度が鈍ってしまっていることも影響していると思う。

そして、今回読んだ第2巻の中では、著者は強烈な体験をするというよりは、香港と比較して刺激の少なさに少々ガッカリしてしまっている。

これは、まさに自分が香港に行ったときに、中南米や中東などに旅したときのような刺激がないことにガッカリしたのと同じような経験をしているように感じられた。

この第2巻は、タイの首都、バンコクに飛行機で到着したところから物語がスタートする。
ところが、香港・マカオにいたときとは打って変わって、どうも何をしても物事がうまく進まない、噛み合わない。

バンコクに何日滞在しても、バンコクという街が捉えられない、と言う。
それが正しいかどうかはともかくとして、基本的に旅人は皆、訪れた国や土地について「○○とは△△な街だ」などというイメージを持つものだ。
しかし、著者はバンコクについて、そのイメージが持てない、と言っている。

そして、それがバンコクという街についてだけでなく、バンコクの人々についても同じだった、と言う。

その後、バンコクを離れ、チュムポーンというタイの田舎町やハジャイという町に寄りながら、マレーシアのペナンへ行く。
ここペナンでは、いつものごとくいかがわしい娼婦宿に泊まる。

ここで、著者は娼婦たちやそのヒモたちと遅くれた青春のような日々を過ごしたあと、マレーシアの首都、クアラルンプールやマラッカを経由し、シンガポールへと向かう。

やはり、これらの町でも著者は物足りなさを感じ続ける。

第2巻最後の目的地であるシンガポールでは、ニュージーランド出身の若者2人組の新米バックパッカーに先輩風を吹かせながら、一緒に行動をする。
しかし、別れ際になんの気なしに「どのくらいの期間で世界を廻るつもりなのか」と訪ねると「三年か、四年」という予想外の答えが帰ってきてショックを受ける。

これは、自分が初めてのバックパッカーとしてメキシコに2〜3週間ほど行ったときに受けた衝撃と非常に似ている。
自分の周りにはこんなに長期の旅をしている友人はひとりもいなかったし、だからホステルで会う旅人には自慢気に
「自分はこんなに長く旅をしている、それは仕事を辞めたからなんだ」
と言ってみたりしたが、その話をした相手からは
「俺も夏のバカンスで2ヶ月旅をしているんだ」とか
「仕事をちょっと休んで半年間の予定」とか
「中南米だけでもう1年以上経っちゃったからこれから仕事をするか悩んでいる」
というような予想だにしなかった返事をもらった。

そして、そんな生き方をしてもいいのか、と自分の価値観がそのときに大きく変わった。
学校へ行って、就職をして、そこそこの給料をもらえるように努力して、定年して、地味に一生を終える。
そんな生き方しか考えたことはなかったが、そんな自由な生き方をしている人が、こんなにもたくさん地球の裏側には存在していたんだ、ということに気付かされ、自分がいかに狭い世界に行き、狭い考え方をしていたのかを思い知らされた。

著者はそれまで、なんとなく半年ほどで旅を終えるつもりでいた。
でも、彼らの話を聞いて、1年だって2年だって、場合よっては彼らのように3年だって4年だって旅をしたっていいんだ、とそんな単純なことに気がつく。

そして、彼はついにこの度の本当の目的の出発地である、インドへと旅立つ…。

前回同様、巻末の付録の高倉健氏との「[対談]死に場所を見つける」がまた興味深かった。
ここで著者が持ち物と自由について語っている部分で「何もないことがとても自由」という考え方には強く共感した。

第2巻は旅へと駆り立てられる、というよりはむしろ、旅人中級者になったときの物足りなさについて共感する旅人は多いと思う。

次巻では、よりエキサイティングな展開を期待している。

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